今こんな本を読んでいます。
「在野と独学の近代 ダーウィン、マルクスから南方熊楠、牧野富太郎まで」志村真幸 著
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2024/09/102821.html
著者は、南方熊楠の研究で有名な慶応義塾大学准教授の先生です。タイトルには四人ほどの名前があがっていますが、取り上げられている学者はもっと多くて、日本の民俗学の創始者 柳田国男、念写や透視など超能力の研究で有名な福来友吉、牧野富太郎のNHKドラマ「らんまん」で描かれたイチョウの精子を発見した画工 平瀬作五郎、江戸学の祖とよばれる三田村鳶魚(えんぎょ)などについても詳細に活写されています。熊楠が留学した当時の大英博物館図書室の様子、当時の雑誌Natureとはどんな雑誌で熊楠のNatureにのった論文とよばれるものは、今のNatureの論文とどうちがうかなどもとてもよくわかりました。また英国のアマチュア学者の学問への貢献の度合いの大きかったこと、どちらかといえば学問を推進していたのはアマチュアだったということなどもこの本で初めて知りました。有名なOxford English Dictionary (OED)がどのようにアマチュアの総力を結集してできあがっていったかなど興味深い事実が満載で、本当によく調べてあるよい本だと思います。この本に書かれている、学問がどのように進歩していったかの歴史事実から、今後の学問を発展させるためのヒントが豊富に得られると思います。とてもよみやすく、エピソード満載であきさせない著者の筆致で、ぐんぐん読みすすめられる本でした。NHKの朝ドラ 「らんまん」を楽しんだ方に是非読んでもらいたい本です。科学や学問がどのようにすすむかについて、より深い理解と洞察が得られると思います。そして今後の日本の学問の進歩について考えて政策を立案していく官僚や政治家、研究者にも是非読んでほしい本だと思いました。年末年始の読書に一押しの本です。