線虫C. elegansの研究者がマイクロRNAの研究でノーベル賞を受賞しました!

また線虫C. elegansの研究からノーベル賞がでました!今夜の二人(Victor Ambrosと Gary Ruvkunさん)の受賞は、ずいぶん前から確実視されていました。22ヌクレオチドからなる小さなRNA(let-4という遺伝子の産物です)がタンパク質の翻訳制御にはたらいていることを二人が発表したのが1993年、Ruvkunがlet-4と同じような働きをするlet-7 (これは21ヌクレオチド) を発見し、そのオーソログ(共通祖先を持つ異種間の相同遺伝子)がなんとヒトを含む様々な生物に存在していることを発見したのが2000年です(末尾のノーベル賞委員会のスライドをご覧ください)。生物のゲノムの中に潜むマイクロRNAの発見は、生物学の教科書を書き換えてしまいました。現代物理学でいまだ正体がわからないダークマターのように、ゲノム宇宙に潜んでいる暗黒物質の存在とその正体をつきとめた発見といえるでしょう。今夜は授賞者発表の生中継をみていたのですが、最初のスエーデン語のところで二人の受賞がわかりました!
https://www.youtube.com/live/Ln5rCmDqua0?si=VatszLW4vqcandiJ

線虫研究者の受賞はこれで8人になると思います。まだまだノーベル賞受賞の候補者はいっぱいいますので今後も楽しみです。ノーベル賞委員会のThomas Perlmann教授が、二人にノーベル賞の受賞を知らせる電話をかけたそうですがアメリカは夜明けごろなので電話がAmbrosには通じず携帯に伝言を残しただけだったようです。Ruvkunのほうも固定電話のためなかなか電話に出なかったのですが、やっと奥さんが出てRuvkunさんを呼んでから、彼が電話に出るまでにまた結構時間がかかったそうです。彼がやっと出た時には たたき起こされたという感じなのでしょうか、最初は大変疲れているような応答だったそうです。ノーベル賞授与を伝えると彼は大喜びで、奥さんに電話をかわってもいいかということで奥さんとも長い間、ノーベル賞の話をしたそうです。二人ともストックホルムに行くのを楽しみにして、大喜びだったとのことです。本当におめでとうございます。

この電話の直後に行われた、電話インタビューももう配信されています!Ruvkunさんによると、多分過去に何度かうけたことがある、友人からのいたずらの受賞通知電話ではなかろうかと最初は思ったそうです。
First Reactions | Gary Ruvkun, Nobel Prize in Physiology or Medicine 2024 | Telephone Interview
https://youtu.be/yAJRqvOa1UE?si=puuFB5BZdN5itD4f

マイクロRNAはその後の様々なRNAの発見のさきがけとなった研究です。このへんのところについては以前紹介したオープンアクセスの教科書をダウンロードして学んでみてください。
今回のノーベル賞をきっかけにRNAについて学ぶのに最適の本です。

RNA研究の発展の歴史を生き生きとたどり現代の最新の知見まで紹介する本の紹介です。

写真は上に掲載した受賞者発表の動画で使われたスライドの一部です。生中継をiPadでみていたときのスクショです。