タイムトンネルというテレビ番組をご存知ですか?私がたしか中学生だったころ、NHKでやっていたドラマです。
タイムトラベルもののSFドラマで、アメリカのアリゾナ砂漠の地下に建設されている軍の極秘プロジェクトの産物がタイムトンネルです。
時間を越えて人間を送り込めるものの、送り込んだ人間を戻すことができない、任意の時代に送り込むことができないなどまだ未完の機械という設定です。プロジェクトが中止されるのを知った一人の科学者トニーが、装置のタイムトラベルできる機能を実証しようと自らを実験台としてタイムトラベルしてしまい、なんと氷山と衝突する直前のタイタニック号に乗り込んでしまいます。彼を助けるべくもう一人の科学者ダグがプロジェクトから送りこまれ、二人がそろって様々な時代へタイムトラベルするという話です。タイタニック号、真珠湾攻撃前日、硫黄島、リンカーン暗殺直前、古代ギリシャ、マルコポーロとの邂逅など様々な時代へのタイムトラベルが一話完結で描かれています。ネロの亡霊だの、植物人間の宇宙人、アーサー王の魔術師なども登場するのでファンタジー的なエピソードも多く、ハードSFではなかったですが、FOXのテレビドラマなので、映画からの過去のシーンの再利用がたびたびつかわれているのが面白かったです。
埋め込んだ動画は、ハレー彗星が地球に衝突する直前にタイムトラベルした二人が、多くの労働者が閉じ込められてしまった炭鉱事故にまきこまれ、どうせ地球は滅亡するのだから救助しても仕方がないという町の人々に、彗星は衝突しないことを納得させて救助させようと奮闘するエピソードです。町の天文台長が彗星が衝突すると発表しており、天文台長の計算が誤りだと彼の前で証明しようとダグが彗星の軌道計算を黒板を使って行う場面がかっこよかったです。天文台長のくれたデータで計算すると、衝突するという結果になったのですが、ダグが目前で軌道計算をする手順、洗練された計算手法に感銘を受けた台長は、ダグをすぐれた科学者として信用することになります。なにかこの計算に考慮されていないものがハレー彗星の軌道を変えるはずだとダグが主張し、その言葉を台長が信用します。タイムトンネルを通じて送られた観測機器で調べると、たしかにハレー彗星の軌道を変えるなにかが作用していることがわかる‥‥という展開でした。何がハレー彗星の軌道を変えたのかは動画をご覧ください。面白いエピソードです。
タイムトンネルというのは今では普及している言葉ですね。最近読んだ本の題名にも使われていました。
「算額タイムトンネル」、
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000212991
「算額タイムトンネル2」
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000312082
この二冊は数学オリンピック本選に出場した経験のある剣道5段の著者(向井 湘吾さん)が書いた小説です。映画のタイムトンネルのような機械ではなく、神社の宝物殿にある算額が幕末の江戸とタイムトンネルとしてつながっていて、算額にメッセージを書くと相互に通信できるという設定です。算額を奉納した和算家と現代の数学の得意な女子校生が対決したりしますが、もう一つの小説の軸は幕末の上野戦争の描写です。算額タイムトンネル2では上野戦争をのりきった和算家が時間の研究のためフランスに留学し、そこでフランスの革命戦争を目撃するという話が展開されます。実際、明治初期に留学した日本の留学生が、フランスの革命戦争を目撃して記録した本も参考文献にあがっていて、戦争の悲惨さが心にしみる小説になっています。もちろんタイムトラベルや数学オリンピック、そして歴史の改変など面白いトピックスもちりばめられていて楽しめる小説でした。この本は、神戸大学の中澤港先生が以前ブログで紹介されていて、読んでみたいと思っていた本です。例によってAmazon Kindle unlimitedで読んだのですが、9月になると読めなくなってしまいました。それでうろ覚えで書いているので間違っているところがあるかもしれません。