生命科学の最新の進歩を学べるフィリップ・ボールさんの動画や本をお薦めします。

生命科学は目覚ましい進歩をとげています。英国のThe Royal Institutionの動画でその最新情報をわかりやすく解説しているものがありました。
What is life and how does it work? – with Philip Ball
https://youtu.be/tw54LmxR21A?si=JAYPH2qavHcvBg6m

講演しているPhilip Ballさんはフリーランス・ライターで、20年以上にわたって有名な科学雑誌Natureの編集者の一人として活躍していた方です。著書も多数あり、多くは日本語に翻訳されています。Amazonでフィリップ ボールで検索してみると、きっと一度は見たことがある本が見つかると思います。
今回の講演は彼の最新の本(500ページ以上ある分厚い本です)How Life Works: A User’s Guide to the New Biology
の紹介をかねています。生命とは何かという問いからはじまって、遺伝子、RNA、タンパク質というふうにボトムアップの話が続きますが、天然変性タンパク質とか遺伝子制御とか、最新の話題が満載です。どうやって器官ができ生物の形がつくりあげられるのかという最新の発生生物学の話題が続きます。生命科学の最新の進歩と、生命とは何かについて学びたい人には必見の講演ですので、是非みてください。面白かったら彼の本を読んでみるのがよいと思います。What is Life?というテーマの本の中では最高の本だと思います。
動画では、後半は発生と形態形成の話が中心となり、マウスのES細胞と初期胚の幹細胞を組み合わせて培養すると、初期のマウス胚がin vitroで出来上がるという話も取り上げられています。目や脳、神経管や拍動する心臓、腸などをそなえたマウス胚がES細胞と初期胚の幹細胞だけから培養皿の中で作り上げられた話はニュースでとりあげられていたので知っている人の多いかもしれません。この画期的な研究の元論文はこちらから読めます。
Amadei, G., Handford, C.E., Qiu, C. et al. Embryo model completes gastrulation to neurulation and organogenesis. Nature 610, 143–153 (2022).
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05246-3
https://www.nature.com/articles/s41586-022-05246-3
この研究のリーダーのMagdalena Zernicka-Goetzさん(英国Cambridge大学)はさらにヒトの細胞でも同様の成果をあげていて、
2023年度の2023 Ogawa-Yamanaka Stem Cell Prize を受賞しています。彼女の受賞講演をご覧ください。
2023 Ogawa-Yamanaka Stem Cell Prize Awarded to Magdalena Zernicka-Goetz, PhD
https://youtu.be/qsX3oTyV46I?si=M0PE7ZbY1dZ4MoHG