RNAに糖鎖が付加されることがあるのをご存知ですか? glycoRNAと名付けられた分子です。

糖鎖がついたRNA=glycoRNAという全く新しい複合糖質(glycoconjugate=糖鎖が結合した分子)が発見されています。

ノーベル化学賞を去年受賞したBertozziさんと、Ryan A Flynnさんが、糖鎖が結合したRNAを発見し、glycoRNA (glycosylated RNA)と名付けました (ノーベル賞受賞前の2021年の論文です)。糖鎖が結合した生体分子には、糖タンパク質と糖脂質があることは有名ですが、RNAにも糖鎖が結合していること、そしてそれがN型糖鎖であること、シアル酸とフコースに富んだ糖鎖であり、glycoRNAは主に細胞膜表面に存在している事などが以下の論文で報告されています (これはオープンアクセスで誰でもダウンロードして読めます。)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34004145/
Cell. 2021 Jun 10;184(12):3109-3124.e22.doi: 10.1016/j.cell.2021.04.023. Epub 2021 May 17.
Small RNAs are modified with N-glycans and displayed on the surface of living cells

そして細胞表面に存在するglycoRNAを可視化することに成功したという論文が5月22日に発表されました。glycoRNAはラフトと共局在しており、細胞内の移動は SNARE タンパク質を介した secretory exocytosisを使っているらしいことも述べられています。
Ma, Y., Guo, W., Mou, Q. et al. Spatial imaging of glycoRNA in single cells with ARPLA. Nat Biotechnol (2023).
https://doi.org/10.1038/s41587-023-01801-z
こちらはNature Biotechnologyにでている論文でpay wallの中にあるので、契約している機関や購読している個人、あるいはお金を払って購入してからしか読むことができません。ただ図は上のリンクにあるFiguresのタブからみられますし、以下のリンクからもみることができますので、glycoRNAが細胞膜上のラフトに共局在している様子や、癌細胞や免疫細胞でglycoRNA の発現量が変動している様子などがみられます。
https://figshare.com/projects/Spatial_Imaging_of_GlycoRNA_in_single_Cells_with_ARPLA/164113

RNAにN型糖鎖が結合したものが存在して、それが癌細胞に対する免疫応答に関与しているレクチン、シグレックsiglecと相互作用するというのですからことは重大です。今までその存在すら予想されていなかったglycoRNAの発見と、それがsiglecに結合するということ、そして細胞表面に存在している事実は極めて重要です。ノーベル賞がもう一つとれる業績ですね。世の中まだまだ未知なものが多いということを肝に銘じて研究しなくてはならないと思います。