2019年夏休みのおすすめ本―その1 成功の普遍的法則 ザ・フォーミュラ

毎日暑い日がつづきます。先日の台風ではリンゴの実が落ちるかと心配しましたが、一つも実が落ちずに順調に色づいています。さて今日からしばらく夏休みにおすすめの本を紹介します。

  先日、本屋にいったら有名なネットワーク科学者バラバシの書いたザ・フォーミュラ 科学が解き明かした成功の普遍的法則という本がありました。即決で買ってきました。これは良い本です。是非皆さん買って読んでみてください。特に学部の学生さん、大学院生、そして若い研究者の方に熟読してほしい本です。
バラバシさんはかつて出版された本、「新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く―」(日本放送出版協会、2002年)(’LINKED:The Science of Networks)日本でもよく読まれた著名なネットワーク科学者です。(こちらの本は品切れのようですが、中古本や図書館で見つけて是非読んでみてください。入門書としてとてもよくできた本でお勧めの本です。)

成功するのには、パフォーマンスだけではだめで、それを社会が評価しなくてはならないことが最初に書いてあります。リーダーとしての成功の秘訣、なぜチームの成果なのにリーダーだけが脚光を浴びるのか‥、などの分析はとても参考になります。筆者らの作成した論文の共著者データからノーベル賞受賞者予測プログラムはほぼ100%過去の受賞者を予測したのに、たった一人だけ、ノーベル化学賞(蛍光蛋白質GFPの研究)を授賞するはずと予測した研究者がどこの大学研究所にもおらず行方不明、もちろんノーベル賞ももらっていませんでした。彼(Douglas C.Prasher)は米国Woods Hole臨海研究所でGFP蛋白質の部分的アミノ酸配列を同定しそれを使って設計したオリゴヌクレオチドプローブで、自らが作成したクラゲのcDNAライブラリをスクリーニングして、GFP遺伝子のクローニングに成功したGFP 研究のパイオニアの研究者です。GFPの研究でノーベル賞を授賞した線虫研究者のチャルフィ(Chalfie)さんにGFP 遺伝子をあげた人です。あちこち探してみるとなんと研究職をやめてしまって、アメリカのトヨタの送迎運転手をしていたのだそうです。GFP遺伝子を同定しクローニングした研究者なのに、なんという不条理。どうしてこんなことになったのでしょうか?

全くアメリカで無名だったアインシュタインが何故か船でアメリカに到着した時、数万人もの群集に歓迎されました。そのせいで、その後、各地で熱狂的に歓迎されました。これはちょっとした間違いに起因するらしい‥などなど面白いトピックも満載で飽きさせません。筆者らの研究(雑誌Scienceにのった論文)をもとに噛み砕いて書かれており、ネットワークサイエンスから導き出された成功の普遍的法則が記載されている必読の本です。ざっと読んだあとは、じっくり参考文献やurlを参照しながら、考えながら読み直すことをすすめます。これから研究者の道を志す人に是非読んでほしい本です。