再び実験ノートについてです。 あまり知られていいないのですが、実験ノートにタイムスタンプ(タイムスタンプサービスを提供している会社の一例です)を押しておくのが必須になりつつあります。
最近では知的財産権の主張のためにも実験ノートが大事だとされています。しかし日本とアメリカの知財の扱いの違いによって、先取権の主張のためには実験記録にタイムスタンプが押してないとアメリカでの裁判には勝てないことが話題になっています。
つまり実験がいつ行われたか、ある発見や発明がいつ行われたかを証言するためにタイムスタンプ入りの資料の作成が必須になるケースが増えているということです。新発明や新発見をして知的財産権を主張したいときには、発明・発見の日付が入ったデジタル資料にタイムスタンプを押して保存しておかなくてはなりません。タイムスタンプというのは、デジタル資料に改ざん不可能な時刻を組み込むサービスで、タイムスタンプを付加した資料は、内容と作成日作成時間が不可分となっており内容と作成日時の改ざんが不可能になっています。通常、タイムスタンプサービスをしている会社にコンピュータのファイル(暗号化ファイルも可能)をアップロードしてタイムスタンプを押してもらうという形をとります。
紙の実験ノートに日付入りの記録をとりその内容を上司などが確認したという署名入りの、よくある実験ノートでは外国での裁判には不十分だと心得ておいてください。紙のノートはあとから簡単に追記ができますので不十分だということは想像できると思います(昔、FBIが実験ノートに貼ってあるプリンタのインクの経時変化を調べた事件がありました)。
米国の裁判で発明の先取権を争った経験のある、知り合いの社長さんによると、米国の裁判所は改ざんが容易な紙のノートはもちろんとりあってくれませんが、国際規格にそった基準でつくられた、日本の会社が提供しているタイムスタンプを押したデジタル資料も取り合ってくれなかったそうです。米国のタイムスタンプ基準は国際標準の規格プラスαの条件がいっぱいあり、それをみたしていないと米国での裁判には勝てないのだそうです。幸いその方は日本のタイムスタンプと米国のタイムスタンプ(一例はここ)
の両方を押したデジタル資料を保存していたので後者を提出して、発明の先取性を主張したところ、めでたく裁判には勝てたそうです。郷に入れば郷に従えということで、こうしたタイムスタンプの利用の実体を知らないばかりに競争に敗れている日本の研究者があとをたたないとのことです。
科学を学んでいる皆さんもぜひ一度タイムスタンプというのを学んでおいてください。