秋のおすすめ本その1―量子生物学(1)

ノーベル賞の発表がはじまり、本庶佑先生が授賞されてみなが大喜びですね。秋も深まってきて福岡では農家の稲刈りも9割がた終わったようです。

量子生物学 Quantum Biologyというのを聞いたことがありますか?数年前にでた本でLife on the Edgeという面白い本があります。細胞生物学の授業で物理や化学専攻の2年生にお奨めと紹介した本です。日本語訳もされていて「量子力学で生命の謎を解く」(水谷淳訳、SBクリエイティブ発行)といいうタイトルで本屋に並んでいます。

動画は英国のRoyal Institutionでのこの本の著者の講演です。この本が出たときにはイギリスで大評判になり、ベストセラーとなりました。雑誌NatureやNew Scientistでも紹介されたほどです。Royal Institutionは、かのマイケル・ファラデーが「ロウソクの科学」などの講演をした場所ですが、様々な演者を呼んでの講演が常に行われており、講演は公開されています。YouTubeのチャンネルもありますので、ご覧ください。電車の待ち時間や通勤時間に視聴すると楽しいです。英語が聞き取りにくいときは字幕を表示させるとよくわかると思います。Royal Institutionでは評判の科学書の著者を読んで講演してもらうことも多く、この本もそうですが、ほかに例えばHow to clone a mammothという評判の本の著者のBeth Shapiroさんの講演など、本の内容がよくわかる講演がいろいろありますので、本を買う前に聞いてみてください。本を買わなくても良いかもしれないほど面白い講演が多いです。

さて量子生物学ですが、この本では酵素反応にプロトンのトンネル効果が働いて効率化に寄与していたり、コマドリの季節の渡り(地磁気を感知するコンパス)にコマドリの体内にあるクリプトクロームというタンパク質分子内の電子の量子もつれが利用されていたり、あるいは光合成中心への効率的なエネルギーの移動にexcitonとよばれる励起子が働いていたりという話が分かりやすく書いてあります。他に匂いの検知メカニズムにも量子効果が働いているという仮説(反論の論文もでています)もあって、読んで大変面白い本です。物理や化学を学んでいる学生さんに特に薦めます。

著者の主張は「生命は量子効果を利用して維持されており、生きているということは量子効果が利用されている状態、死ぬとそれがなくなるということで、まさに量子効果の働く境界で生命が存在している」というものです。光合成の反応中心では量子コンピューターが働いているという論文の紹介もあります。その論文をみて一時間もかからずその間違いがわかったというMassachusetts Institute of Technologyの先生の講演が一番下の動画です。この有名な量子コンピューターの権威Seth Lloyd教授は、自分のラボで量子生物学を研究しているそうです。九州大学の生物学科の教授だった西村光雄先生は留学中、光合成細菌の光合成でのチトクロームの酸化における電子移動が液体窒素の温度でも起こることを発見した論文を有名なBritton Chance先生との共著で書かれました。続く研究でChance先生は液体窒素の温度やそれ以下の温度まで冷却すると100K(ケルビン)以下では電子移動が温度に依存しなくなることを発見、光合成における電子移動には量子トンネル効果が介在していることを示唆する論文を書かれています。西村先生の実験の話はこの本の第3章(翻訳書の98ページ)にのっています。九州大学にも量子生物学の研究室はありますし、最近は大阪大学でもこんな研究がたちあがっています。分子生物学会のワークショップでも量子生物学がとりあげられるなど、面白い研究分野になりそうです。

 

プレプリントサーバーとその活用法の紹介4―最新情報の追加です

このブログではプレプリントサーバーの活用について紹介してきました。いつも多数のアクセスありがとうございます。写真は近所でみかけたくずの花です。秋も深まってきました。

何度もNIHのVideoCastを紹介していますが、数日前に米国のポスドクの現状とポスドクとしての能力、存在感をアピールするのにプレプリントを発表することが薦められるという講演があったので紹介しておきます。Jessica PolkaさんのNIHでの講演で、米国のポスドクの現状、最初のfirst author(筆頭著者)の論文を発表するのに要する期間が、これまでになく長くなっており、論文が少ないので研究費を獲得したり、次の職を得るのに困難を覚えるポスドクが増えているのに対する対策、そして査読する能力をどのように向上させるかなどを扱っている、興味深い講演でした。
講演のスライドはここをクリックするとダウンロードできます。Google documentに保存してあるのでFirefoxではうまくいかないので、Google のブラウザChromeかInternetExplorerでアクセスしてください。青字で閲覧のみとか書いてありますが、スライドはダウンロードできます(開いたページの「ファイル」をクリックして開き、「形式を指定してダウンロード」を選んで、Powerpointやpdfなど好きな形式でダウンロードしてください。講演は高画質でダウンロードできますので、たとえば1240kの高画質でダウンロードして、適当なメディアプレーヤーでみればゆっくり講演を聴講できますのでお試しください。ハイビジョンの高画質のムービーでもみられるメディアプレイヤーとして、私はMPC-BEというフリーソフトを使っています。

JessicaさんはASAPbio(エイサプバイオ)という組織―ASAPbio (Accelerating Science and Publication in biology) is a scientist-driven initiative to promote innovation and transparency in life sciences communication. We are a 501(c)3 nonprofit incorporated in the state of California―に属していてプレプリントの利用を推奨するとともに、ポスドクのキャリアパスについても研究している方です。

講演にもありますが、論文に要求されるデータ量が激増していいます。それで昔は4年の大学院(米国の例)の場合、平均3-4年で筆頭著者の論文first author paperがでたが今では平均4-5年と論文の出版が遅れるようになっているようです。これは論文として出版されるために必要な実験量が昔の倍以上になっていることも原因であり、以下の論文で具体的に実証されています。論文中の実験量は図のパネルの数―つまりFig. 1A, Fig. 1B,. Fig. 1Cなどどある場合のA,B,Cなどの数―を数えてそれにTableの数などを加えて算出してます(註1)。下の論文やこのビデオをみてもらうとデータがありますのでご覧ください。実験量が増えたことで、論文として完成するのに時間がかかり、ポスドクや院生が論文をだすのが遅くなってしまうわけです。これは日本で多い5年プロジェクトなどでも経験しますが、ポスドクや院生や研究者にとって深刻な問題です。それをどうして救うかというのがこの講演の内容です。プレプリントを活用できるというのがこの講演の一つのメッセージです。(註1:私見ですが、さらにグラフの場合、統計処理するためサンプルのサイズN=30とかになることがよくありますので、一つのパネルといってもそこには本当に多数の実験が繰り返されている場合があり、これをカウントするともっと実験量が増えると思います)。

Accelerating scientific publication in biology
Ronald D. Vale

プレプリントのメリットは、いろいろあります。
メリットその1) 去年あたりから、グラントの申請や業績報告書にプレプリントを掲載することができる組織が激増しています。つまり就職活動や研究報告、新しい研究費の申請のときに、業績としてプレプリントが使えるようになっているわけです。
日本の方に関係あるところでは
Human Frontiers Science Program (December 12, 2016)でもプレプリントが利用できます。“The Board of Trustees of the International Human Frontier Science Program Organization (HFSPO) has decided that for competitions starting in calendar year 2017, applicants may list preprint articles in the publication section of HFSP proposals. Current HFSP awardees are also permitted to cite publications which are deposited in freely available preprint repositories in interim and final reports to the Organization.”

といった具合です。Wellcome Trust , MRCやNIH, HMMIなど大手のグラント母体もそういう方針になっています。これもASAPbioのページにリストがあります。

プレプリントについては以下のページ(ここをクリック)がまとまっています。またpreprintについて投稿してみた人の経験がこのリンクに動画と画像で紹介されています。

プレプリントサーバーは以前にも紹介しましたが、最新のプレプリントサーバーのリストがありますのでご覧ください。Research Preprints:ServerListというページです。

ここにリンクがあります。

メリットその2) プレプリントを公開すると学会の講演のように、研究者の存在感を示すことができます。

メリットその3) フィートバックがくるので論文を改善できます。bioRxivの場合は10%ほどにコメントがつくようです。他の人にコメントをみられたくないという人も多くて、そんな人は著者にemailしてきたり、twitterやFacebookなどのSNSでコメントをくれるようです。プレプリントサーバーのコメントは公開前にチェックが入っているので炎上とかなないようです。

メリットその4) 雑誌の編集者はプレプリントをみていますので、プレプリントをみてうちの雑誌に投稿してくださいといってくることinvitationも結構あるそうです。(PLos GeneticsやProc. Royal Society Bなど)

メリットその5) 研究の早い段階でプレプリントをみて連絡してくる共同研究者が見かる例も多いそうです。

メリットその6) いつどんな研究をしたかを、公開のプレプリントサーバーに記録としてのこせる(doiもプレプリントに付与されますし、プレプリントの引用を許している雑誌も増えています)上に、バージョン管理もできる。

メリットその7) 就職や研究費(グラント)申請の時、研究者としての生産性を示すことができる。これは上にも述べました。今までは論文を投稿してからアクセプトされるまでは業績や研究成果に載せられないことが多かったのですが、プレプリントを業績として認める組織が増えているので大きなメリットです。

メリットその7) そしてなによりも発見を加速させることができるのが最大のメリットでしょう。

では不安点はというと:
I’m going to get scooped!というのが最大の不安なのではないでしょうか。しかしこれは簡単にはやれないと思われます。論文の内容をプレプリントでみて、それをもとにもっとよい論文を書くというのですが、これをやるのはほぼ不可能だと思います。アイデアとか実験とかはプレプリントに書かれており、投稿日もバージョンも公開されているので剽窃は困難です。アイデアや方法、結果のクレジットを早々ととって、研究成果を共有するメリットのほうがいまや大きくなってきているようです。物理とかコンピュータサイエンスの分野でのプレプリントの経験から、scoopするのが困難でリスクをともなうことは明らかなことだと思います。その他の考える不安点も講演で議論されていますのでご覧ください。

どの雑誌がプレプリントへの投稿前の掲載を許可しているかは、ここをごらんください。

またプレプリントの雑誌会というのもネット上にいろいろあるのでその紹介やレフリーのコメントなどを公開する動きが加速しているという話も講演にあります。

福岡にアインシュタインの脳があった!アインシュタインが訪れた九州大学と福岡(その4)

この前、アインシュタインの脳についての番組をNHKスペシャルでやっていました(アインシュタイン 消えた“天才脳”を追え )。とても興味深い番組で番組について書こうとおもっていたのですが、本日9月2日午後10時からBS1で、NHKスペシャルの番組の未収録場面を含めた特別編の放送(BS1スペシャル「アインシュタイン 消えた“天才脳”を追え 特別編」)があるようです。是非ご覧ください。
この番組の冒頭で、福岡市の近くの直方(のうがた)におられる先生がアインシュタインの脳をもっているといって見せておられるシーンがありました。先日私が生化学会の九州支部会で講演したときの懇親会で、NHKが取材に来てアインシュタインの脳をみせたという話をされていた杉元先生です。お兄さんがアインシュタインの脳を探る旅にでた方で、BBCでアインシュタインの脳を探るという番組がつくられたと記憶しています。九州には結構、アインシュタイン関係者がおられるのでびっくりしました。杉元先生のお兄さんの本は、「大追跡!!アインシュタインの天才脳 (講談社SOPHIA BOOKS)  2001/1 杉元 賢治 (著)」というもので、どこかで表紙をみた覚えがあります。いつも紹介しているInternetArchiveのWayBack Machine(昔のホームページを収集しているサイト)アインシュタインの脳についての杉元先生の日本語論文が集まっていますのでご覧ください。WayBack Machineは知財関係の調査などで企業などでも大活用されているサイトだそうです。
福岡もだんだん秋めいてきました。

夏休みおすすめ本 その2 細胞生物学とLinux入門のブルーバックス、そしてゲノム編集

試験が終わって夏休みを満喫している学生さんも多いかと思います。新学期が始まる前によんでみるとよい本をいくつか紹介しておきます。まず

1) ブルーバックスの「細胞の中の分子生物学 最新・生命科学入門」(森 和俊 著)は、私の大学二年生向けの細胞生物学の講義の参考書に紹介していましたが、とてもわかりやすい本で、生物学専攻でない物理や化学専攻の大学1,2年生におすすめの入門書です。もちろん生命科学関係の学生にもおすすめで、私のラボの院生も読んでとても参考になったといっていました。

2) ブルーバックスでもう一冊のお勧めは、「入門者のLinux 素朴な疑問を解消しながら学ぶ」(奈佐原 顕郎 著)です。こちらも生物学演習の学生さんに薦めていましたが、linux入門には最高の本だと思います。なぜlinuxが必要かというところからはじまって、最後は気象衛星ひまわりの画像をダウンロードして画像をつなげてムービーをつくるところまで勉強できます。私も読みながらコマンドを実行しながら読み進んでいくと、ちゃんとムービーをつくることが出来ました。ubuntuのlinuxを使えばコマンドもすべて本のとおり打ち込めば実行できますので是非お読みください。以下の講演会(平成27年度NGSハンズオン講習会)のビデオ、テキストをみれば、biolinuxをvirtualboxでwindowsにインストールして動かし、この本の実習を行えるだけではなく、簡単なバイオ系ソフトをlinuxで動かしてみることもできます(リンクの事前予習資料一覧のpdfから始めてください。インストールの仕方のスライドもリンクにあります。丁寧なスライドですのでだれでもbiolinuxがインストールできます)。biolinuxをインストールするやり方は詳細にこのページのリンクにありますので、そのとおりやれば簡単にできます。ただしハードディスクの空容量は十分確保してからはじめてください。平成27年度の講演会では、シェルスクリプト入門、pythonやperl入門、Rの入門などいろいろな講義が動画とテキスト付で公開されています。私も通勤電車のなかで全部視聴して大変勉強になりました。その後の講習会は段々と上級者向けへ内容がシフトしていますのではじめるなら27年度の講習会からかなと思います。

このブルーバックスをbiolinuxを動かしながら読んでいくときの注意点です。
biolinuxではこの本の285ページのコマンドは作動しません。この本はシエルがbashなのですが、biolinuxはシェルがzshなのが原因です。これはzshがdirectoryの中身を探しにいっていないのでno matchというエラーを返してくるのです。コマンド実行前に、、biolinuxで
setopt nonomatchとうって実行しておくと、285ページのコマンドもbiolinuxで動きます。zshとbashの違いについてはたとえばここに詳しく書かれています。

3) これも分子発生学の講義などで紹介した本ですが、CRISPR-Cas9によるゲノム編集の開発者の一人、さんが書いた本 「CRISPR(クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見」(ジェニファー・ダウドナおよび サミュエル・スターンバーグ著)もおすすめです。ゲノム編集の開発だけでなく、その正しい応用を目指すスタンスが強調されているとてもわかりやすい本です。組織特異的にゲノム編集をするのはどうしたらよいのかなども紹介されていて、ゲノム編集について考えるための必読文献です。Doudnaさんの講演はいっぱいネットにありますがたとえば去年のこの動画などはいかがでしょうか。バクテリアの獲得免疫システムとして働いているCRISPRの概観と、ウイルスがanti CRISPRタンパク質を使ってそれから逃れるといった最新の話題もとりあげられています(2017年の講演)。英語字幕をYouTubeでオンにしたら聞き取りやすいと思います。

もっと新しい講演は以下のものです。

ことし6月のThe Croonian Medal Prize Lectureでの講演です。英国王立協会の由緒ある賞the Croonian Medal and Lecture 2018の受賞講演です。これもYouTubeで字幕オンでみるとよいでしょう。

 

夏休みおすすめ本 その1―宇宙線を観察してみよう

夏休みの自由研究に霧箱をつくってみませんか。

町の図書館にいってみると新しく入った本の中に、「きみは宇宙線を見たか: 霧箱で宇宙線を見よう」 山本 海行 (著), 小林 眞理子 (著)―仮説社という本があったので早速借りて読んでみました。昔からつくってみたかった霧箱の簡単な作り方が載っていました。ドライアイスを含めて必要な材料の入手法と作り方が丁寧に書かれていてさらに、宇宙線や放射線、原子の話までわかりやすく書いてあるので夏休みの自由研究におすすめの本でした。著者のホームページ(うみほしの部屋)にいってみると、霧箱実験室のコーナーには霧箱の作り方がいろいろでていますし、今日いってみると新しく空き缶でつくる霧箱の作成法などものっているので是非、訪問してみてください。ホームページには福島の放射線の測定結果などものっていて動画も満載のとても読み応えのあるおすすめのホームページです。
冒頭の動画は山本さん、小林さんの本にも紹介してありますが、名古屋大学理学研究科・素粒子宇宙物理系F研 基本粒子研究室のホームページにある高感度霧箱動画のYouTube版です。霧箱の作り方や関連情報もいろいろでていますので、是非こちらのホームページ(上の動画ページへのリンクや素粒子の飛跡の写真も満載です)にもいってみてください。

写真は近くの山で撮った夕日に照らされて鳴くヒグラシです。ちょっぴり秋の気配も感じられますが、まだまだ暑い福岡です。

糖鎖科学の最新のビデオの紹介です―NIH VideoCast

NIHのビデオキャスト糖鎖科学デーの講演会のビデオがアップロードされています。NIHのvideocastingはNIHで公開されている講演会をビデオでみられるサイトです。ビデオのダウンロードやキャプションファイル(字幕ファイル)のダウンロードもできます。
またNIHのpodcastもあってこちらでは、videocastとaudiocast が見たり聞いたりできますので携帯とかでみるのに便利です。

2018 NIH FDA Glycoscience Research Dayというのが、本年7月13日に開催されており、そのビデオです。この糖鎖科学の講演会と研究発表会の催しは去年も開催されており、そのビデオの内容は私の去年の九大での糖鎖科学の講義にも活用させてもらいました。今年はどんな内容なのか楽しみです。皆さんも是非ご覧ください。

ビデオはダウンロードすることができますし、画質も選べます。ビデオの掲載されているページにある下のようなリンクをクリックするとダウンロードできますので、やってみてください。このビデオは5時間ちょっとの講演会の記録になっています。英語が聞き取りにくい方は、キャプションファイルもダウンロードできますので便利です。

To download this event, select one of the available bit rates:
[64k]  [150k]  [240k]  [440k]  [740k]  [1040k]  [1240k]  [1440k]  [1840k]

生命科学系の英語の講演会のサンプルとしても使えますので、自分で英語で講演するときの参考にもどうぞ。またスライドがビデオにうつっていますが、高解像度のビデオをダウンロードすれば、字も絵もきわめて高画質でみられますのでとても便利です。この記事は高画質版をダウンロードしながら書いています。 (今終わりました。1.5Gのサイズだと40分弱かかりました。)

毎日暑いです。写真は車で夕方涼みにいったダムからみた博多湾です。ひぐらしが鳴いてとてもきれいな公園でした。

アインシュタイン博士が訪れた九州大学と福岡(その2)―アインシュタインの旅日記の謎

アインシュタインの旅日記の謎―なぜアインシュタインは福岡を訪れたのか

今日はものすごい豪雨でしたが、先週の土曜日(6月30日)には九州大学医学部キャンパスにある百年講堂で開催された日本生化学会九州支部会のシンポジュウムで話させてもらいました。若い学生さんたちがいっぱいで熱気にあふれてとても楽しいひと時を過ごさせてもらいました。私達は長い間 この九州大学医学部キャンパス(馬出キャンパス―まいだしキャンパスと読みます)で研究していたので、懐かしい場所です。九州大学医学部キャンパスにはいろいろな見どころがあります。詳しく書いてあるホームページを見つけましたのでここにリンクを張っておきます。以前紹介したMr.トルネードのときもこの西日本シティ銀行の「ふるさと歴史シリーズ「博多に強くなろう」」を紹介しました。いろいろ福岡のことがわかって楽しいシリーズです。そのNo.79の「九州大学医学部のきらめく博士たち」という記事です。医学部キャンパスの詳しい紹介と地図もあって、とても面白いのでご覧ください。

さてその記事の中に、アインシュタインが福岡にくることになったいきさつが書かれています。アインシュタインの旅日記という英語版の本

The Travel Diaries of Albert Einstein The Far East, Palestine, and Spain, 1922 – 1923

が最近出版され、日本についてのとても好意的な意見が書かれていて話題になっています。これは当たり前でしょう。

1922年改造社の招きに応じたアインシュタインが日本にくる船中で血便が出る下痢と発熱の症状を訴えたとき、アインシュタインの奥さんElsaが、乗り合わせていた日本人の医師に治療をたのんだそうです。癌を心配していたそうですが、医師の診断は感染症ということで、医師の薬と治療で完治したのでした。ドイツ語を話すその医師の名は三宅 速(みやけ はやり)。九州大学医学部の外科学の教授、日本外科学会会長で国際外科学会役員、ヨーロッパに何年も滞在して医師として長く働いたことがある方でした。すぐに友人となった三宅医師にアインシュタインは日本訪問の際はかならず福岡の三宅さんのお家をたずねると約束。日本での講演旅行の行先に福岡が加えられたのだそうです。アインシュタインは福岡での講演会のあと、九州大学を訪問、そして三宅さんのお家でウイーンから運ばれてきていたピアノを弾いたとのことです。
三宅さんは何故、アインシュタインと同じ船に乗っていたのでしょうか。ポーランド版のWikipediaの記事によると、第一次世界大戦のあと、国際外科学会は大戦勃発の原因となった敵国であり敗戦国のドイツとオーストリアを学会から締め出す決定をしたそうです。三宅先生は国籍で外科医をしめだすというのはおかしいと主張して、反対の署名集めに奔走、アメリカやヨーロッパを訪問して多くの署名を集めました。その結果、世界的に著名な医学者の賛同署名があつまりました。有名なMayo クリニックの創始者のWilliam James、 Charles Horace兄弟、ボストンのCushing, セントルイスのGrahamなどの署名を含む集まった署名は学会を動かしたそうです。そうした活動の帰り道に乗船した北野丸にEinstein夫妻が偶然 同乗して日本へ向かっていたのです。

三宅先生はその後、もう一度ヨーロッパでアインシュタインと再会、旧交をあたためたそうですが、1945年、米軍の空襲で、岡山の防空壕に避難していたところを殺害されました。芦屋に住んでおられた三宅先生と奥様の三保さんを、息子さんが岡山の自宅に呼び寄せ、鳥取へ疎開する2日前のできごとだったそうです。

戦争が終わった後、息子さんがプリンストンにいたアインシュタインにご両親の死を連絡して墓碑銘へのメッセージをお願いしたところ、ドイツ語と英語のメッセージが届いたとのことです。そのメッセージはタイプうちされていたそうですが、沢山届けられていたアインシュタインの直筆の手紙から一字一字選んで肉筆のメッセージに変換、拡大して三宅先生のお墓に刻まれています。先生の出身地徳島県美馬市にあるお墓については美馬市の作成した動画がYouTubeにありますのでご覧ください。

Hier ruhen Dr. Hayari Miyake und dessen Frau Miho Miyake.Sie wirkten vereint für das Wohl der Menschen, Und schieden vereint als Opfer von deren Verirrungen.
Albert Einstein
この墓碑銘の翻訳は上の動画、あるいは西日本シティ銀行の記事にありますのでご参照ください。

以上の記事は西日本シティ銀行にある記事と、ポーランド語版のHayari Miyakeの記事オランダ語版の美馬市の記事に基づいてまとめました。どちらの記事もGoogle 翻訳(たとえばポーランド語を英語に翻訳して読みました。日本語への翻訳は英語への翻訳にはるかに劣ります)で読んだので間違っているところがあるかもしれませんので間違いはご容赦ください。詳しくは、九大図書館の蔵書にも、お孫さんが書かれた「アインシュタインからの墓碑銘」という本
lがあります。市販されておりますので是非お読みください。

 

湖でボートが出火!消防が来るのには25分はかかる状況下での消火法とは?

今日は有名なビデオを紹介しておきます。ラボ内ホームページで学生さんに紹介していたビデオですが、twitterでも話題になったニュージーランドの湖での火災消火のビデオです。ビックリする方法ですよね。ボートには燃料タンクが積んであったそうで、危機一髪だったそうです。

別の角度からみた動画もここにあります。とっさの頭の使い方の例です。
この事件を報じたニュージーランドの報道はここにあります。消火にいったボートにとっても危険な救助法で、もっと大惨事になったかも、という批判もありますが、
But Riwai Grace, a shift manager at one of New Zealand’s Fire Service communications offices, said he thought the rescue was “ingenious.”だそうです。

下の写真は散歩の途中でみかけた ねむの木です。梅雨の晴れ間にきれいに花が咲いていました。

 

糖鎖生物学の最新の英語講義シリーズの紹介と、その他の面白いサイトの紹介です

このサイトですが、RSSフィードがこのブログページからしかでないというデフォルト設定でした。今日、プラグインをいれて、固定ページからもRSSフィードがでるようにしました。リンク集を今朝、すこし改訂して以下の記事のサイトもとりこみましたが(入れたばかりのリンクを赤い文字で表示してみつけやすくしました)、そうした固定ページへの変更もRSSフィードでわかるようになっているはずですので、是非、RSSフィードも使って訪問してくださるようお願いします。

さて本題です。ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins大学)医学部で2018年におこなわれている糖鎖生物学の最新の講義Introduction to Glycobiology(英語の講義です)が面白そうです。ビデオが順次アップロードされており、みるだけで糖鎖生物学の基本と医学とのかかわりが勉強できます。有名なG. Hart先生やその他の先生が講義されておりシラバスがここにあります。是非聴講してみてください。

その他、リンク集には:
科学技術振興機構JSTのバイオサイエンスデータベースセンターのポータルサイトへのリンクも載せました。中にはいろいろ役立つサイトへのリンクがありますのでクリックして探してみてください。
たとえば、新着論文を紹介している、
ライフサイエンス新着論文レビュー
最新のレビュー記事をのせている、
ライフサイエンス領域統合レビュー
など参考になるリンクがあります。自分に役立ちそうなサイトをブックマークして使ってみてください。

またバイオ系の英語の書き方については以下のブログも参考になります。
http://bioenglish.hatenablog.com/

ファラデーの日記をダウンロードしてみよう。Internet Archiveの使い方2 J-STAGEとの組み合わせ。

マイケル・ファラデーはイギリスの生んだ偉大な科学者です。彼の実験ノートについては以前ふれましたが、Internet Archiveからその実験ノート(Faraday Diary)のvol.1-vol. 5までをダウンロードすることができます(全7巻なのですが残りはまだアップロードされていません)。Experimental Researches in Electricityや、有名なロウソクの科学、その他いろいろなFaradayの本がありますので検索してみてください。ファラデーはモーターも発明していますが、動いている様子は以下のYouTubeの動画にあります。この動画はアインシュタインのE=mc2をテーマにした優れたドラマ仕立ての作品です。日本語吹き替え版も探せばありますが、やさしい英語ですので英語でみるほうが画質もいいのでおすすめです。この中にはアインシュタイン、ファラデー、ラボアジエ、エミリー・デュ・シャトレ、リーゼ・マイトナーなどが登場します。若いファラデーの物語のほか、老いたファラデーをマックスウェルが訪れて、ファラデーに電磁場の真空中の速度が光速と等しいと告げて、ファラデーの予言(光は電磁波である)どおりだったと告げる感動の場面も描かれています。

ファラデーは電気分解のファラデー定数でわかるように電流と化学を結びつけたほか、電気と磁気、重力の関係を探る実験も繰り返していました。場の概念は現代物理学の基礎ですが、彼は電気力線の概念を提唱して物理学に場の概念を持ち込んだ偉大な科学者です。このへんのところは、ファラデーの電磁気学研究における力・力能・粒子」夏目賢一著という論文をご覧ください。

また町の図書館で借りて読んだ本ですが、物理学を変えた二人の男―ファラデー,マクスウェル,場の発見(岩波書店)も良い本でした。下はガモフの「重力の話」(伏見康治 訳)ではじめて読んで感激したファラデーの言葉です。重力と電気の関係を探る一連の実験の締めくくりの言葉です。

2717 Here end my trials for the present. The results are negative.They do not shake my strong feeling of the existence of a relation between gravity and electricity, though they give no proof that such  a relation exists. Royal Institution, July 19, 1850. (Experimental Researches in Electricity, Dover版、第二巻、168ページより)

ファラデーの日記ですが、関連した論文をJ-STAGEからダウンロードできるので紹介しておきます。1932年の応用物理に「フアラデーの日記」(矢島 祐利)という記事がのっています。ファラデーの日記が出版されるごとに解説を加えたものでファラデーの日記(2)、ファラデーの日記(3)とつづき、(6-完)まで記事があります。どれもJ-STAGEからダウンロードできますのでご覧ください。最近の日記の解説では「実験の天才ファラデーの日記」(木原 壯林)が同じくJ-STAGEからダウンロードできます。この記事に書いてあるペーパーバックス版のファラデーの日記は、私も出版されたときすぐ購入して全巻持っています。J-STAGEについてはこちらをご覧ください。