糖鎖生物学入門―2

糖鎖生物学入門―2

新元号が令和に決まりましたね。漢和辞典でという字を調べてみると、令日は「よき日」の意味ですし、令人は「よき人、美しい人」の意味、令嬢とか令徳など、の次に来る字が「よきものであり、うやまう」という用例が多いようです。平和や なごみがよきものになりますようにという意味になる、よい元号だと思いました。
今これを九大医学部図書館で書いていますが、九大医学部の桜も満開です。写真は今日の医学部キャンパスで撮影した満開の桜と、

3月26日に撮影した医学部キャンパスの桜です。

さて、糖鎖生物学入門の二回目です。九州大学で同名の講義をした時の資料をもとに全く新しく書いていきます。

糖鎖の構成要素(単糖):
糖鎖sugar chainというのは、単糖とよばれる糖がつながってできる鎖(枝分れするものも多い)です。糖鎖というのは例えばこんなものです。

この図には9種類の糖鎖があげてあります。色のついた丸や四角が単糖monosaccharideを表しており、単糖が様々につながって糖鎖ができるのです。枝分れしたりしていますので、糖鎖はとても多彩な分子構造をとることができそうですね。

単糖というのは、グルコース(ブドウ糖です)とかガラクトースとか、フコースとかN-アセチルグルコサミン(エヌアセチルグルコサミン)とかいう糖で、色々な種類があります。糖鎖について学び始めるときに最初に学ぶべき単糖の名前を下の図にのせておきます。こんな単糖があって、糖鎖をつくっているのだというのをみるのに最適な、入門者むけの単糖だけを選んであります(註1参照)。
この図にのっている単糖の名前や、記号を全部覚える必要はありません。その都度、参照することにしたらいいです。図にある単糖の中でN-アセチルグルコサミンGlcNAc(N-アセチルグルコサミンです。糖鎖生物の研究者は普通、グルックナックと読みます)とか、マンノースMan、グルコースGlc、ガラクトースGalなどの名前はサプリメントの広告とか、日常生活でよく耳にするのではないでしょうか?図には15個の単糖が並んでいますが、たいていの糖鎖はこの図の中の数種類だけを使ってつくられています。単糖の具体的な構造は以下で紹介します。

さて単糖の表記には図にみられるような、カラフルな記号表記が良く用いられています。昔はもっとごちゃごちゃした表記しかなかったのですが、パッと見て糖鎖の構造や類似性がみやすいカラフルな表記が普及しつつあります。Symbol Nomenclature for Glycans (SNFG)と呼ばれる記号表記で、以下のページにまとめられているので参照に便利です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/glycans/snfg.html

リンクをクリックしてもらって図をご覧になればわかりますが、ものすごい数の単糖がならんでいます。これを全部覚える必要はありません。この図には様々な糖鎖を記述できるようにと、ヒトなどではあまり見かけない単糖も入っているからごちゃごちゃしているのです。そこで次の表には私の独断と偏見で選んだ、入門者に必要な単糖のみを残して後は消したものをあげてあります。(バクテリアにみられる糖とか、希少糖などめずらしい糖―いろんな生理機能も知られて重要性が叫ばれています―を除外しています。)上の図よりちょっと増えて20個ありますが必要に応じて参照していただければと思います。リンク付のpdfファイルもここにありますので参考にしてください。

Glc  Man  Gal 
グルコース マンノース ガラクトース
GlcNAc  ManNAc  GalNAc 
N-アセチルグルコサミン N-アセチルマンノサミン N-アセチルガラクトサミン
GlcN  ManN  GalN 
グルコサミン マンノサミン ガラクトサミン
GlcA  ManA  GalA  IdoA 
グルクロン酸 マンヌロン酸 ガラクツロン酸 イズロン酸
  Xyl  Fuc 
キシロース フコース
Kdn  Neu5Ac  Neu5Gc  Neu  Sia
ケーディーネヌ N-アセチルノイラミン酸 N-グリコリルノイラミン酸 ノイラミン酸 シアル酸(左の単糖から合成される単糖の分子ファミリー名)

青字の単糖にはリンクがはってありますので、クリックすると単糖の構造式や立体構造が表示されるページにとびます。
こうしたカラフルなSNFG表記の記号は、糖鎖科学の標準的教科書Essentials of Glycobiology 3rd editionでも使われています。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK310274/ 書籍版は有料ですが最新版が無料で上のリンクで公開されています。この本の図を全部パワーポイント形式にまとめたスライドも前の記事に書いたように無料で公開されていいます。糖鎖生物学の入門者には、この教科書の通読は必要ありません。せっかくネットにアップロードされていて、本の中身の検索もオンラインで自由にできます(このリンクのSearch this bookボタンを使います)ので、糖鎖学習のハンドブックとして是非活用してください。第二版の日本語訳も出ています。

単糖の構造を立体表示してみよう:PubChemによる表示
PubChemというのをご存知ですか?PubChemはNIHが公開しているオープンデータベースです(だれでも研究データをアップロードできて、だれもが利用できるというのがオープンの意味です)。PubChemを使うと様々な化学物質の情報、生理機能、特許、文献、構造式、立体構造そのほかが無料で調べられ利用できます。糖鎖を構成している単糖の構造を立体表示するにも最適のサイトですので、使ってみましょう。

SNFGのページを開いて以下のリンクから単糖のリストのパワーポイントファイルをダウンロードすると、

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/glycans/docs/SymbolNomenclatureForGlycans_SNFG_Slides_UpdateJun2017.pptx

全部の単糖が入ったファイルがみられます。上で物凄い数の単糖のリストといったものです。各単糖にはPubChemへのリンクが張られており、スライド表示にして単糖の名前をクリックするとPubCemへのリンクがブラウザで開いて、化学式や立体構造がPubChemで表示されるのでとても便利です。いろいろPubChemで単糖を表示して遊んでみるのが入門にはよい経験になります。グルコースやガラクトースを立体表示してくるくる回して分子模型を手にとってみているように学べます。

注1:図は糖鎖構造を書くソフトGlycoEditorの入力画面をスクリーンショットしたものです。無料の糖鎖構造作図ソフトですので自分で使えそうな人は、ちょっと使ってみるのをお勧めします。詳しい使い方は次回以降に説明します。

 

糖鎖生物学入門―1

糖鎖生物学入門―1

今回から糖鎖生物学Glycobiologyについて、ゆっくり解説していきます。
生物の細胞の表面を眺めてみると、細胞膜の最外層、細胞が外界と最初に相互作用する領域(私は細胞膜のフロンティア領域と呼んでいます)には糖鎖sugar chainがびっしり存在しているのがわかります。たとえばここ やここにある、電子顕微鏡写真をご覧ください。
これらのリンクの写真にみられるように生物の細胞の表面は糖鎖でびっしり覆われています。これを糖衣glycocalyx(グライコ・ケイリクスと発音します。覚えておくとよいのですが、英語では単語の中にあるa という文字は「ア」と発音しないでアルファベットの読みそのままの「エイ」と発音する場合が多いです)と呼びます。細胞は糖のころもを着ているのです。糖衣は細胞の一番外側にありますから、外から細胞に感染するウイルスやバクテリアが最初に接触するのが糖衣の糖鎖です。細胞の最外層の糖鎖の創り出すパターンは、細胞の種類や状態を反映しており、糖鎖パターンが、その細胞のみかけを特徴づけているといってよいでしょう。隣の細胞やリンパ球、そして病原体であるウイルスや細菌が、まず第一に接触するのが細胞表面にある糖鎖です。糖鎖のパターンを認識して細菌やウイルスが好みの細胞に結合したり、病原性大腸菌O157の毒素(志賀毒素、あるいはベロ毒素とよばれています。赤痢菌の毒素と同じものもあります)が腎臓の細胞に結合したりします。もちろん糖鎖は病原体を呼び込むためにあるのではないので、細胞自身も糖鎖の配列を進化させることで、こうした細菌や細菌毒素、ウイルスに感染しないように進化しているわけで、病原菌や毒素、ウイルスと細胞表面糖鎖の共進化はこれからの面白い問題といえるでしょう。これから生命の第三の鎖ともいわれる糖鎖について学んでいきましょう。

タンパク質の多くには糖鎖がついています(糖鎖が付加(ふか)されているといいます)。ウイルス本体の外側に位置するタンパク質も同じで、ほとんどが糖鎖が付加したタンパク質(糖タンパク質)です。一般にウイルス感染は、細胞表面にある糖鎖にウイルスが結合するか、あるいはウイルス表面の糖鎖を細胞がくっつける事で成立します。

さて、この論文には、
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(16)30401-9
エイズウイルスに対する抗体ができにくい理由であるグリカンシールドの立体構造が述べられています。糖鎖がエイズウイルスのタンパク質部分を被ってバリアーをはっているというイメージですね。このバリアーがあるため、エイズウイルスに対する有効な抗体ができにくいということです。こういった糖鎖によるバリアをグリカンシールドglycan shieldと呼びます。下の図は上のCellの論文(Stewart-Jones et al., 2016, Cell 165, 813–826)
のGraphical Abstractからとったグリカンシールドの様子です。青や紫、緑の部分が糖鎖のグリカンシールドです。

ではこの論文があつかっているグリカンシールドの様子をブラウザで立体構造表示で観察してみましょう。タンパク質の立体構造のデータベースPDBにこの論文のエイズウイルス3量体(注1)に抗体が結合した複合体の立体構造が登録されています。そのうちの一つ、5FYJという名前で登録されている立体構造を見てみましょう。(ほかに5FYK, 5FYLも登録されているので比較してみてください) 以下のリンクをクリックしてブラウザで以下のページを表示してみてください。(表示させている動画が一番下にありますのでみてください)

https://www.rcsb.org/structure/5FYJ
上のリンクをクリックすると、左上に図が表示されています。その直下に3D Viewというのがありますね。その直後にあるStructure という単語をクリックしてください。するとブラウザの画面が変わって、立体構造が画面に表示されます。マウスを左クリックして動かすと立体構造が動くので、複合体の構造をくるくるまわして観察することができます。マウスホイールを回すと構造が拡大、縮小表示されます。またマウスの右クリックでオブジェクトを移動できます。
右側のメニューには、Assembly, Model, Symmetryなどと項目が並んでいます。Styleのプルダウン(初めはCartoonになっています)からSpacefillを選ぶと、スペースフィルモデルでの表示に変わります。Backbone、Surfaceなどいろいろ変えて表示がどう変わるか試してみてください。Ligandのところは、はじめはBall & Stickモデル表示になっています。これは糖鎖の部分を表示していますので、プルダウンからSpacefillを選んでみてください。またマウスを表示したい部分のところにあわせてそっと動かすと、その部分のアミノ酸名や糖の名前が表示されます。MANはαマンノース、BMAはβマンノース、NAGはN-アセチルグルコサミンのことです。

マウスの詳しい使い方はMouse controls documentationという部分をクリックすると表示されます。
以下は、立体構造を表示している動画です。
びっしり糖鎖が三量体のウイルスタンパク質表面に生えているのが実感できます。ナンテンの実のように赤いのが糖鎖です。

今回は、糖鎖のイントロと、糖蛋白質の立体構造をみるやり方の一つを説明しました。PDBは糖タンパク質にかぎらず様々なタンパク質の立体構造が集めてあるデータベースです。いろんな分子を表示してみると面白いです。

註1:3量体というのは、一種類の分子が3つ結合して複合体となり一体として働くものをいいます。2量体なら、2つ結合して一体として働く複合体のことです。エイズウイルスのこのタンパク質は糖鎖付加もされており、実際のウイルス上での状態を忠実に反映する3量体をつくるのに大変苦労したそうです。やっと安定な三量体ができたことから、グリカンシールドと抗体の関係なども解析できるようになり、立体構造もわかってきたそうです。

新しい私達の論文が公開されました―先天性グリコシル化異常症DPAGT1-CDGを線虫を使って研究するという論文です

先月投稿していた論文がアクセプトされて原稿がオンラインに掲載されました。Kanakiさんの修士論文の内容を主とした論文で、私達のCREST研究の成果を含めた論文です。Dejima君Matsudaさん、Murata君、Nomuraさん他 沢山の方々との共同研究の成果です。Oxford University Press発行の雑誌Glycobiologyを購読している方は是非ご覧ください。アブストラクトへのリンクは以下の論文のタイトルをクリックしてください。

UDP-N-acetylglucosamine-dolichyl-phosphate N-acetylglucosaminephosphotransferase is indispensable for oogenesis, oocyte-to-embryo transition, and larval development of the nematode Caenorhabditis elegans

糖鎖遺伝子の異常というのはアメリカ合衆国の人口の20%程度でみられるとされており、なんか具合が悪いと病院を訪れる患者さんや、100件近くの医療機関を訪れても原因がわからなかった患者さんのゲノム配列やmRNA配列をシークエンサーで調べてみると、糖鎖遺伝子の異常が原因であるということがわかったという例が頻出しています。それでアメリカでは糖鎖生物学者は病院、j研究所でひっぱりだこになっているということです。
今回の研究は先天性グリコシル化異常症CDG(congenital disorders of glycosylation)の原因遺伝子の一つでCDG-IjあるいはDPAGT1-CDGと呼ばれる病気の原因遺伝子DPAGT1の線虫での研究成果です。線虫でわかった結果をヒトの病気の解明に役立てようとする研究手法の実施例でもありますので是非ご覧ください。
先天性グリコシル化異常症についてはGoogle検索で「先天性グリコシル化異常症」といれてすぐにヒットする和田芳直先生の論文「先天性グリコシル化異常症CDGの分子診断」 (Proteomics Letters, 2017, 2, 1-6)をご覧ください。

私達の今回発表した論文ではヒトのN型糖鎖合成の第一段階ではたらく酵素DPAGT1の線虫版遺伝子algn-7を線虫で初めて同定し、遺伝子産物の酵素活性を確認、その遺伝子algn-7を阻害すると幼虫致死、卵母細胞形成異常、卵母細胞から胚への遷移(oocyte-to-embryo transition)が異常となることなどを報告しています。このDPAGT1遺伝子のノックアウトはマウスでは胚発生の初期での致死を引き起こしますが、お母さんマウスの体内でおこる死亡で詳しいことはなかなかわかりません。そこで線虫の登場となるわけです。
線虫は体が透明なので、発生していく卵母細胞などの様子が生きたまま観察できます。そこでこの研究では、この遺伝子の生殖巣での役割(幹細胞ニッチの形成から卵母細胞形成、そして受精)と初期胚分裂と幼虫期での役割を詳しく調べてみました。この遺伝子産物DPAGT1は従来日本で発見されてこの酵素を阻害する定番の薬であるツニカマイシンのターゲットとされてきましたが、ツニカマイシンはN型糖鎖の合成以外にも様々な副作用があります。実際 線虫で調べてみると、線虫でツニカマイシンを与えたときと、DPAGT1遺伝子を阻害したときとでは少々違った結果がでるのがわかりました。ツニカマイシンを使うより遺伝子そのものを阻害するのが一番確実です。線虫ではこの遺伝子の阻害がRNAiで強力かつ安定的に実施できます。そこで今回の研究ではDPAGT1遺伝子の機能をRNAiや遺伝子破壊で阻害したらどうなるかを詳しく調べた研究にもなっています。

このalgn-7遺伝子を阻害するとたしかにN型糖鎖の合成が抑えられることも確認できたので、さらに一歩すすめて生殖巣で発現しているどの「N型糖鎖がついているタンパク質」の阻害がalgn-7遺伝子の阻害でおこるのと同じ異常をひきおこすかも調べてみました。生殖系列で発現している遺伝子のリストとはすでに公開されています(RNA-Seqでの結果がすでに公開されています)。また線虫でN型糖鎖が付加されていることが実験的に確認されている遺伝子のリストもすでに公開されています(これもデータベースGlycoProtDBが公開されています。線虫、ヒト、マウスのデータがあります)、この二つのデータの胸痛部分456個の遺伝子をデータベース検索で選び出し、その遺伝子機能をRNAiで阻害した結果を調べてみました。その結果、同定できた5つの遺伝子は、algn-7の遺伝子阻害と同様の異常を引き起こします。これらの5つの遺伝子には、従来のCDGの原因遺伝子のほか、ごく最近にCDG遺伝子と同定されたもの、およびおそらくCDGでの異常症状の原因となる遺伝子ネットワークに関与していると推定されるものが含まれていることがわかりました。

  今まではN型糖鎖を阻害すると糖鎖付加が不十分なタンパク質が蓄積して小胞体ストレスが引き起こされてその結果、様々な表現型がでると漫然と考えられていましたが、小胞体ストレスはたいした影響は与えておらず、実はpatched遺伝子ネットワークなどいくつかの重要な遺伝子の機能阻害がCDGでの異常を引き起こしているのではないかと考察しています。是非、ご一読ください。

写真は先日 福岡市動物園に行ったときに撮影したお猿の子供たちの写真です。左上でブランコに上り初め、右で上まで到達。左下で下へとジャンプして落下し、右下で回転楕円体のような黄色の部分にのって遊んでいる一連の動きの写真です。朝早くでしたが元気にあそびまわっていて、子ザルの元気さがとてもよかったです。

 

糖鎖科学の最新のビデオの紹介です―NIH VideoCast

NIHのビデオキャスト糖鎖科学デーの講演会のビデオがアップロードされています。NIHのvideocastingはNIHで公開されている講演会をビデオでみられるサイトです。ビデオのダウンロードやキャプションファイル(字幕ファイル)のダウンロードもできます。
またNIHのpodcastもあってこちらでは、videocastとaudiocast が見たり聞いたりできますので携帯とかでみるのに便利です。

2018 NIH FDA Glycoscience Research Dayというのが、本年7月13日に開催されており、そのビデオです。この糖鎖科学の講演会と研究発表会の催しは去年も開催されており、そのビデオの内容は私の去年の九大での糖鎖科学の講義にも活用させてもらいました。今年はどんな内容なのか楽しみです。皆さんも是非ご覧ください。

ビデオはダウンロードすることができますし、画質も選べます。ビデオの掲載されているページにある下のようなリンクをクリックするとダウンロードできますので、やってみてください。このビデオは5時間ちょっとの講演会の記録になっています。英語が聞き取りにくい方は、キャプションファイルもダウンロードできますので便利です。

To download this event, select one of the available bit rates:
[64k]  [150k]  [240k]  [440k]  [740k]  [1040k]  [1240k]  [1440k]  [1840k]

生命科学系の英語の講演会のサンプルとしても使えますので、自分で英語で講演するときの参考にもどうぞ。またスライドがビデオにうつっていますが、高解像度のビデオをダウンロードすれば、字も絵もきわめて高画質でみられますのでとても便利です。この記事は高画質版をダウンロードしながら書いています。 (今終わりました。1.5Gのサイズだと40分弱かかりました。)

毎日暑いです。写真は車で夕方涼みにいったダムからみた博多湾です。ひぐらしが鳴いてとてもきれいな公園でした。

日本の糖鎖科学ロードマップが発行されました!

以前の記事(2018年5月9日)でお知らせしていた日本版の糖鎖科学研究のロードマップ
未来を創るグライコサイエンスー我が国のロードマップー」が完成して発行されました。6月初めに自宅に届いたのですが、入手法を問い合わせていたのでご案内が遅れました。入手法が公開されましたとの案内が今日届きましたのでお知らせしておきます。

日本糖鎖科学コンソーシアム(JCGG)のホームページ(→)から一冊1000円(送料はJCGGが負担)で購入できますので上のホームページのリンクから申し込んで是非ご覧ください。

糖鎖科学を学ぶ人、糖鎖科学の将来や応用を考える人、医学研究者や医療従事者、糖鎖に関心のある事業家など、糖鎖科学に関心のあるすべての方の必携の参考書です。英語版も以下のタイトルでSpringer-Natureから発行されます。
Glycoscience Application and Basic Science :Insights from Japan Consortium for Glycobiology and Glycotechnology

日本語で読めますのでまず日本語版を購入されることをお奨めします。

糖鎖生物学の最新の英語講義シリーズの紹介と、その他の面白いサイトの紹介です

このサイトですが、RSSフィードがこのブログページからしかでないというデフォルト設定でした。今日、プラグインをいれて、固定ページからもRSSフィードがでるようにしました。リンク集を今朝、すこし改訂して以下の記事のサイトもとりこみましたが(入れたばかりのリンクを赤い文字で表示してみつけやすくしました)、そうした固定ページへの変更もRSSフィードでわかるようになっているはずですので、是非、RSSフィードも使って訪問してくださるようお願いします。

さて本題です。ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins大学)医学部で2018年におこなわれている糖鎖生物学の最新の講義Introduction to Glycobiology(英語の講義です)が面白そうです。ビデオが順次アップロードされており、みるだけで糖鎖生物学の基本と医学とのかかわりが勉強できます。有名なG. Hart先生やその他の先生が講義されておりシラバスがここにあります。是非聴講してみてください。

その他、リンク集には:
科学技術振興機構JSTのバイオサイエンスデータベースセンターのポータルサイトへのリンクも載せました。中にはいろいろ役立つサイトへのリンクがありますのでクリックして探してみてください。
たとえば、新着論文を紹介している、
ライフサイエンス新着論文レビュー
最新のレビュー記事をのせている、
ライフサイエンス領域統合レビュー
など参考になるリンクがあります。自分に役立ちそうなサイトをブックマークして使ってみてください。

またバイオ系の英語の書き方については以下のブログも参考になります。
http://bioenglish.hatenablog.com/

NCBI Bookshelfの紹介と、糖鎖生物学の教科書、糖鎖科学のロードマップの紹介です。

ランチョンセミナーでも紹介しましたし、またこのサイトのリンク集にもあげてありますが、NCBI Bookshelfには様々な生命科学の本がアップロードされており、自由にオンラインで読めたり内容を検索して読んだりできるので、勉強や研究にとても役立つ、活用できるサイトです。ストライアーの生化学(第5版)だのMolecular Biology of the Cellの古い版(第4版)などもありますので、本のタイトルを見るだけではなく、ページの一番上にある、キーワード検索ボックスを活用していろんな本を縦断検索してみてください。レポート作成や、新しい分野の研究のための予備知識の収集、セミナーや授業の準備などに大いに役立ちます。

私達の研究している糖鎖生物学の定番の教科書Essentialsof Glycobiologyの第3版(Cold Spring Harbor Press社、2017年発行の最新版です)がこのサイトにあるので、オンラインで無料で読むことが出来ます。編集者のEskoさんのカリフォルニア大学サンディエゴ分校のサイトには、この本の図(低解像度版)と図のパワーポイントスライドをダウンロードできるようにしてありますので、興味のある方は訪れてみてそこに書いてある著作権に留意した上でご利用ください。
糖鎖生物学は、アメリカでは研究のロードマップが公開され、集中的な予算投下で研究が猛烈に進んでいる分野です。アメリカの医療研究機関では糖鎖生物学の研究者がひっぱりだこで、人材不足になっているという話です。この糖鎖科学研究のロードマップ(Transforming Glycoscience
A Roadmap for the Future, National Research Council (US) Committee on Assessing the Importance and Impact of Glycomics and Glycosciences))もBookshelfに公開されていますのでご覧ください。pdf版もここからダウンロードできます。
これは日本語訳も発行されていますが、日本でも最新の研究成果をふまえたグライコサイエンスのロードマップが完成しており、ほどなく公開される予定です(私も執筆しています。英語版も発行されます)。

 

キンランの花が咲いていました!ヨーグルトと血液型の関係

キンランの花をみつけました。

近所を散歩していると、公園の斜面にキンラン(金蘭)が咲いていました。絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト) に指定されている植物で、黄色い小さな花をつけていました。この斜面は金蘭の自生地として立ち入り禁止になっていて、さらにその中の特定の場所は四角にロープが張ってあって保護されています。今年はその四角の中に2株が花をつけており、写真の花はもう一つの四角エリアの外に咲いていました。きれいですね。毎年4-5月に咲くとのことです。キンランは、地中の、菌根菌(菌類です。fungi)と共生するそうで、株を掘り出して家にもちかえっても長く生かすことはできないし、繁殖させることももちろん不可能だそうです。生育条件がよくわからないので、この花の種子だけを保存しても、花を再生することはできないことになります。

町がたてたキンランの自生地の看板には、天皇陛下御歌が書いてありました。
 「語りつつあしたの苑(その)を歩み行けば林の中にきんらんの咲く」(平成30年1月12日「歌会始の儀」)

共生といえば、人間も腸内細菌と深くかかわりあい、相互作用しながら生きていますが、この花も地中の菌類の生命活動とともに繁殖しているわけです。生物が相互作用しながら生きていることを教えてくれる花ですね。

余談ですが、人間の腸内細菌といえば、ヨーグルトの乳酸菌もいろいろありますね。もともとは人間の腸由来の乳酸菌を使っているので、ヨーグルトを食べる人の腸細胞表面の糖鎖配列の違い、たとえば血液型の違い(ABO式血液型は糖鎖配列の違いの一例です)によって定着しやすい乳酸菌とそうでないものがあるそうです。つまりヨーグルトの乳酸菌をもっていた人の腸細胞表面の糖鎖配列と同じ糖鎖をもっている人の腸には、より乳酸菌が定着しやすいはずだというわけです。市販のヨーグルトをたべてみて、自分にあうと思う製品は、ひょっとしたらその人の血液型にあった乳酸菌を使ったヨーグルトなのかもしれません。

夏真っ盛りです。Pompe病の治療薬開発のドラマ 「小さな命が叫ぶとき」の紹介など

福岡では毎日猛暑日がつづいており、空は雲がない毎日です。
大学院入試やオープンキャンパスも終わり、11日から16日まで一斉休止実施期間も終わりましたが、夏真っ盛りで本日も熱中症警報がでています。
8月6日土曜日のオープンキャンパスでは多数の生徒さんや先生がたに来学いただき、にぎやかな一日を過ごせました。 暑い中、九州大学を訪れてくださってどうもありがとうございました。 研究室を訪問してくれた高校生のみなさんには、糖鎖生物学の話をきいてもらいました。その中で紹介した糖鎖生物学と病気について考えさせてくれる映画 「小さな命が叫ぶとき」(原題:Extraordinary Measures)はレンタルビデオ屋さんなどでよく見かけます。夏休みにおすすめの映画ですので、ぜひご覧ください。

グリコーゲンがうまく分解されないためにおこるPompe(ポンぺ)病という病気の治療についてのDuke大学での実話に基づく映画です。ハリソン・フォードが治療薬を開発する研究者を演じており、病を抱える子供たちを救おうと製薬会社をたちあげる父を ブレンダン・フレイザーが演じています。

リソソームで 糖鎖がうまく分解されないことで起こる病気はリソソーム病(ライソソーム病、ライソゾーム病ともいいます)の一種ですが、不具合のある分解酵素によって様々なものが知られています。日本でも様々な研究室で治療法の開発がつづいています。

今年は冬がとても寒く、夏がとても暑いからでしょうか、自宅の庭には例年になく たくさんユリが花開きました(写真は朝とったユリの影です)。 まだ大学院入試や就職活動が続いている学生さんも多いと思います。夏バテしないように、気をつけて頑張ってください。

糖鎖化学の教科書の紹介  (2009/10/17)

前回はオハイオ州立大学がうんだ大科学者Paulingさんのことにふれました。先日99才でなくなった阿武 喜美子(あんの きみこ)先生(お茶の水女子大学名誉教授)もオハイオ州立大学に留学されていたのを思い出しました。阿武先生は日本の女性科学者の地位を確固としたものにするのに大きく貢献された有名な糖化学者です。

糖鎖生物学を学ぶとき糖の化学をどんな本で勉強したらいいですかと先生にきいたとき、まず推薦されるのが
「糖化学の基礎」 (阿武 喜美子・ 瀬野 信子 著) というすぐれた教科書です。残念ながら絶版になっているようで古書でしか手に入りませんが、図書館には所蔵しているところが多いので是非、手にとって勉強してみて下さい。

阿武 喜美子先生の業績については「女性科学者のパイオニア達」というシリーズのテレビ番組で詳しく紹介されています。番組をみてから上の教科書を開いてみるとまた理解も格段にすすむのではないでしょうか。

理化学研究所のビデオ配信サービスYouTubeでみられますので、是非ご覧下さい。